SARSを追え(1)2003年6月29日
社会●SARSを追え(1)
=======================
今回のSARS事件は私に大きな衝撃を与えました。
5月から調べ出してその真相について大方の見通しが出て、それを検証し早くも確信にいたって……それが単純な病気の流行ではないことについて一度は絶望しました。
正直いってこれまで自分がやってきたことやこれからのこと、今私と共に真実や正義に向かって社会のさまざまな問題に日々戦っているNGOやボランティア、学者、議員……すべての努力がこっぱみじんにされ虚空を舞うような気持ちでした。
絶望と虚無感が私を支配し、何もしたくなくなりました。
私が放送大学で最後に受けた3つの授業がありました。熊谷智徳先生の「価値生産経営論」と道家 達將先生の「科学技術の歴史に見る環境と開発」、福田秀人先生の「産業と労使の関係」でした。
いずれも最後にふさわしい授業でした。
その中で熊谷先生の授業で印象に残った言葉があります。先生は「絶望は虐殺よりもこわい」とおっしゃっていました。
人間にとって一番苦痛なのは物理的な破壊より精神的な破壊なのです。
わたしたち市民が民主主義の政治や行政に「絶望」して選挙に行かなくなれば簡単にファシズムが政治を支配する。
戦場で遭難して極限下におかれた兵士で奇跡的に生還する人がいます。それは常に自分が生き延びたときはこうしようという気持ちを強く持ちつづける人なのだそうです。「もうだめだ」とあきらめた人(絶望した人)は死んでしまうそうです。
人間の生命力はDNAのテロメアにあるようなちゃちなものではなくて、精神、魂なのかもしれません。
いったい私の命はあとどれだけあるのか……神のみぞ知るわけですが、運を天に任せて神の導くままに生きることにしました。
こうして気を取りなおして絶望から這い出すことができました。
読者のみなさん覚悟してください。これから私は皆さん方を政治と行政、国際政治の戦場のまっただ中にお連れします。これらの話はあなたが内海新聞を読む今このとき永田町と霞ヶ関と世界の指導者と変な連中がうごめく戦場……マスコミが目をそむける……で進行していることです。
「絶望」しないでください。あまりにもマスコミがウソを伝えすぎてみんなに楽園(パラダイス)を信じ込ませているので。
……SARSを知らない5月まで私は「感染症」というテーマについては逆に手伝いをしている日本リザルツのNGOの活動でけっこうやっていました。対策のターゲットはおもに開発途上国……アフリカやアジアに蔓延する結核、性感染症(STD)、そしてHIV(エイズ)でした。日本政府のODA予算をそれへの対策にもっと使うように、現地にムネオ式のハコモノを作るのではなく、医者や薬を届けるように……それが私のやるべき作業でした。でもこういう問題は国会議員にとって「票にならない」テーマなのです。
そして、感染症については一般的なことがメインで科学的側面も深く知らない状態でした。DNAについてはその「GCAT」というワードで生物の細胞はできているんだ……とかぐらいには若干の興味はありました。でも、分子生物学やバイオインフォマティクス、ウィルス学……その辺は知るよしもありませんでした。
その「票にならない」テーマに取り組んでくれる国会議員がいました。民主党の若手、斎藤淳衆議院議員です。彼は皮肉にも加藤紘一が議員辞職をして自民党が打撃を受けているときに山形県から初当選したのです。エール大学に留学していて計量政治学の有望な研究者で将来は大学教授になるところを何をあろうか、この腐った永田町に突入してきたのです。彼の議員会館の部屋はこれまた皮肉なことに田中真紀子のいた部屋です。
彼は一年生議員の怖いもの知らずのベンチャー精神の塊でした。しかし、以前ODAについて研究をしていたこともあったので私達の話をあっという間に理解しました。
私達は故・小渕首相が沖縄サミットで有名な「沖縄感染症イニシアティブ」……5年間で総額30億ドル(約3600億円)を感染症対策にあてると明言しておきながら、外務省はその予算をムネオ事件で反省するどころか結局、今までと相変わらず土建屋や商社が儲かる事業(いわゆる間接的投資)ばかりに使い、医薬品や病気治療の実践を行う「直接的投資」にはハナクソみたいにしか出さない状況なのです。
斎藤議員は今国会の予算委員会でこのことを厳しく川口外務大臣や茂木副大臣に対して追及したのです。
もちろん、彼らはしどろもどろに官僚答弁を繰り返して逃げています。今も逃げています。
さて、そういうさなか、4月下旬からのゴールデンウィーク、東京都庭園美術館で「ヨーロッパジュエリーの400年展」を観て近くのトラットリアで優雅な目黒区民の気分になってスパゲッティを食べて家に帰った途端のどが痛くなりだしました。あんなに元気だったのにカゼを引いてしまったのです。そして咽頭炎はひどくなり、咳も出ます。連休中私は悲惨なことに毎日家で熱を出して寝込んでいました。
そのとき、SARSの流行が報道されていました。せっかくの連休なのに家で寝ているだけになってしまった私は痛むのどをだましだまし、ひまつぶしにインターネットをしていました。
そうしたら、次のページが検索エンジンで出てきたのです。英語の掲示板のページです。でも運営者のIto氏は日本人みたいです。
Comment from tor kristensen on April 16, 2003 08:54 PM | permalink to comment
After seeing that the CDC release the genome for SARS, I ran the genome through a standard word-frequency analysis. The SARS genome has a high degree of variablilty and is non-repetitious in nature, as you would expect an efficiently compressed set of instructions would be. However there are 8 sets of 10 nucleotide groupings that repeat exactly twice.
【訳・内海君】CDCが発表したSARSゲノムを標準的な暗号解読をした。SARSゲノムは高度な変異性があり、自然界にある反復性はなく効率的に圧縮されたかのようだ。(解説:通常自然界の生物のゲノムは無駄な反復などがあったりするが、SARSウィルスはその点は人工的に作られたようにきれいなようなのだ)しかし、10bp(10塩基)の8つのゲノム対のグループが2回繰り返されている。
#1 GTCTTGTTTG - line 3501 column 1, line 19901 column 2
#2 TGTTCCTTTT - line 3001 column 4, line 14351 column 4
#3 GGTGACGGCA - line 25751 column 4, line 28401 column 2
#4 TGCCAAGAAA - line 19851 column 3, line 1001 column 5
#5 TGTTGTCTGT - line 13151 column 3, line 16251 column 5
#6 TTAGAGTAGA - line 11801 column 4, line 13651 column 4
#7 TTACTGGTTA - line 3251 column 4, line 16701 column 2
#8 CTTGGTATTA - line 22151 column 1, line 11001 column 5
As a matter of course I have done Google searched on each of these sequences.
Interestingly each and every one of these sequences occurs in a known human infectious virus or parasite.
【訳・内海君】私はGoogleでそれぞれの配列を検索してみた。興味深いのはこれらの配列は個々およびすべてが既知のヒトの感染症や寄生虫ゲノムに含まれている。
Google Results for #1 "GTCTTGTTTG"
=========================================================================
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
LOCUS HPV3 7820 bp ds-DNA VRL 04-OCT-1993
DEFINITION Human papillomavirus type 3 (HPV-3), complete genome.
ACCESSION X74462
SOURCE Human papillomavirus type 3 DNA.
REFERENCE 1 (bases 1 to 7820)
AUTHORS Delius,H. and Hofmann,B.
TITLE Primer-directed sequencing of human papillomavirus types
JOURNAL Curr. Top. Microbiol. Immunol. 186, 13-31 (1994)
REFERENCE 2 (bases 1 to 7820)
AUTHORS Delius,H.
TITLE Direct Submission
=========================================================================
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
LOCUS AC044810 194297 bp DNA linear PRI 23-JAN-2002
DEFINITION Homo sapiens chromosome 11, clone RP11-494M8, complete sequence.
ACCESSION AC044810
VERSION AC044810.7 GI:18266660
KEYWORDS HTG.
SOURCE Homo sapiens.
ORGANISM Homo sapiens
Eukaryota; Metazoa; Chordata; Craniata; Vertebrata; Euteleostomi;
Mammalia; Eutheria; Primates; Catarrhini; Hominidae; Homo.
REFERENCE 1 (bases 1 to 194297)
AUTHORS Birren,B., Linton,L., Nusbaum,C. and Lander,E.
TITLE Homo sapiens chromosome 11, clone RP11-494M8
JOURNAL Unpublished
REFERENCE 2 (bases 1 to 194297)
=========================================================================
……私は彼と同じくGoogle検索エンジンでそれぞれの"GTCTTGTTTG"を検索してみました。すると、配列に含まれるゲノムがいくつか現れました。驚くことにそれは偶然というよりはある一定の方向性で合致するものが多かったのです。
それを私は表にしてみました。(#5,#6は疲れてしまったのでやらなかった)
No シーケンス 該当 -------------------------------------------------------------------------
#1 GTCTTGTTTG - line 3501 column 1, line 19901 column 2
・クラミジア
・ライスジャポニカ
・Halocynthia roretzi
・human papillomavirus(ヒト乳頭腫ウイルス)
・clone fq75a05.x1(←この系統はバイオ操作のクローンでできたゼブラフィッシュという小さな熱帯魚のこと)※ゼブラフィッシュやショウジョウバエ、マウスはクローンやバイオ操作の実験でよく用いられる。
・clone fb24f09.x1
・clone fk74e05.x1
・fruit fly
・house mouse
・Homo sapiens
#2 TGTTCCTTTT - line 3001 column 4, line 14351 column 4
・fruit fly
・インディカ米
・Oryza sativa
・Rous sarcoma virus(肉腫)
・NBS/LRR disease resistance protein, putative
・Homo sapiens
・Takifugu rubripes
・japonica of Oryza sativa (rice)
・house mouse
・Macaca fascicularis brain cDNA, clone:QnpA-19713
・clone fc42f09.y1
・Gonioctena nigroplagiata mitochondrial COII gene
・Norway rat
#3 GGTGACGGCA - line 25751 column 4, line 28401 column 2
・Hypothetical protein C05D9.1[Caenorhabditis elegans]
・Colletotrichum lagenarium DNA for polyketide synthase
・Pseudomonas phage Pf1
・Oryza sativa
・65 kda antigen [Mycobacterium tuberculosis, Genomic, 217 nt].
・Acropora tenuis mitochondrion
・fm57g07.x1
・clone fl86a06.x1
・ライスジャポニカ
・house mouse
・fruit fly
・Herpes (Roseolovirus)
#4 TGCCAAGAAA - line 19851 column 3, line 1001 column 5
・Proteobacteria gamma: Shewanella
・Oryza sativa chromosome 4 clone OSJNBb0089K06
・fruit fly
・Mycobacterium paratuberculosis Triticum monococcum
・Simian immunodeficiency virus(類人猿エイズ)
・Synechococcus sp. PCC 7002
・strong similarity to unknown protein
・Vaccinia virus(ワクシニア症, 種痘症)
・Homo sapiens
#5 TGTTGTCTGT - line 13151 column 3, line 16251 column 5
Homo sapiens
(疲れたのであとはやっていない)
#6 TTAGAGTAGA - line 11801 column 4, line 13651 column 4
(疲れたのでやっていない)
#7 TTACTGGTTA - line 3251 column 4, line 16701 column 2
・Marburg Virus(マールブルグ病, ミドリザル病 (致死率の高い出血高熱病)
・simian virus(類人猿ウィルス)
#8 CTTGGTATTA - line 22151 column 1, line 11001 column 5
・Mouse hepatitis virus strain MHV-A59 C12 mutant(ネズミ肝炎・突然変異)
私は夢中になって検索を続けました。でも、表を見ていて急激にこわくなりました。「なぜ?なぜ?」
が心の中で連呼しました。
この検索結果から浮かび上がるキーワードは
病気:「マールブルグ病」「サルエイズ」「種痘症」「ネズミ肝炎」「クラミジア」「肉腫ウィルス」
動物:ショウジョウバエ、マウス、ゼブラフィッシュ、ヒトゲノム
植物:オリザサティバ(中国のイネ)、ライスジャポニカ(日本米)
コロナウィルスなんてどこぞや?出てくるのはきわめて凶悪な人間の病原体ウィルス、バイオ操作の実験動物、アジアの人の主食のコメ……ばかりです。
私の脳裏にこれらのワードをつなげたシナリオがそのとき浮かんだのです。
(つづく)
(内海君:小市民)
スポンサーサイト